【タイのビジネス基礎知識】進出前に知っておきたい、タイの税金事情

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タイへの進出の際に現地の税金事情は避けて通れない重要な要素です。日本とは異なる税制を理解し、適切な税務対策を講じることで、円滑な事業運営が可能となります。

目次

VATとは?

VATは、商品やサービスが作られ、消費者の手に渡るまでの過程で付加される価値に対して課される税金です。つまり、原材料費や人件費などを除いた、その商品やサービスに新たに生み出された価値に対する税金と言えます。

VAT申告とは?

VAT(付加価値税)の申告とは、事業者が毎月の売上と仕入れに関するVATの計算を行い、その結果を税務署に報告する手続きです。この申告を通じて、事業者は納めるべき税額を確定し、納付を行います。

また、VATの申告には、主に以下の2種類の申告書が使用されます。

  1. PP30(Phor Phor 30): 商品やサービスの売買に関するVATの申告書です。一般的に、毎月月末に計算を行い、翌月15日までに税務署に提出します。ただし、e-Taxシステムを利用している場合は、翌月23日までが申告期限となります。
  2. PP36(Phor Phor 36): サービスの輸入に関するVATの申告書です。源泉徴収税の申告と同様に、翌月7日までに税務署に提出します。e-Taxシステムを利用している場合は、翌月15日までが申告期限となります。

タイにおけるVAT申告の罰則

タイで事業を行う上で、VAT申告は非常に重要な義務の一つです。しかし、申告漏れや誤った申告をしてしまうと、厳しいペナルティが科される可能性があります。

  • VAT申告を怠った場合:VATの申告を全く行わなかった場合、納めるべきだったVATの2倍もの額が加算税として課せられます。
  • 申告内容に誤りがあった場合:VATの計算を間違えてしまい、本来納めるべき税額よりも少ない金額を申告した場合、不足している税額の全額が加算税として課されます。
  • 申告期限を守らなかった場合:VATの申告には期限が定められており、この期限までに申告書を提出することが義務付けられています。期限を過ぎてしまうと、未納の税額に対して毎月1.5%の延滞税が課されます。
  • 取引がない場合:VATに登録されている事業者は、たとえその月に取引が全くなくても、申告書を提出する必要があります。無申告は厳しく罰せられるため、取引がない月でも必ず申告を行いましょう。無申告の場合には、加算税に加えて、月額500バーツのペナルティも課されます。

タイの付加価値税(VAT)における税率と課税取引の区分

タイのVATの標準税率は法律上10%と定められていますが、現在は政府の決定により7%に軽減されています。

課税取引の区分

VATの課税対象となる取引は、大きく分けて以下の3つに分類されます。

  1. 課税取引:タイ国内で商品を売買すること、タイ国内でサービスを提供すること、商品やサービスを海外からタイへ輸入すること これらの取引に対しては、標準税率のVATが課されます。
  2. 0%課税取引:商品を海外へ輸出すること、タイ国内で提供されたサービスが、タイ国外で利用される場合。また、航空機や船舶による国際輸送や保税倉庫内や輸出加工区内で行われる取引 これらの取引に対しては、VATは課されませんが、仕入れ時に支払ったVATは還付または翌期の申告で控除することができます。
  3. 非課税取引:農産物、食料品、新聞、雑誌、教育サービス、医療サービスなど、生活必需品や公益性の高いサービス これらの取引に対しては、VATは課されません。ただし、仕入れ時に支払ったVATは、還付も控除もできません。

タイの付加価値税(VAT)の納付額計算と注意点

タイで事業を行う企業は、商品やサービスの売買を通じて付加価値税(VAT)を扱います。VATの納付額は、売上と仕入れの状況によって異なります。

VAT納付額の計算

VATの納付額は、以下の式で計算されます。

納付額 = 売上VAT – 仕入VAT

  • 売上VAT: 商品やサービスを販売した際に受け取ったVATのこと
  • 仕入VAT: 商品やサービスを購入した際に支払ったVATのこと

仕入VATが売上VATを超える場合

仕入れにかかったVATの方が、売上として受け取ったVATよりも多い場合は、その差額を還付請求することができます。ただし、還付を受けるためには、税務調査を受ける必要があります。また、輸出の割合が高い企業は、優良輸出企業や登録輸出企業に登録することで、税務調査なしで還付を受けることができる場合があります。

仕入VATが控除できないケース

全ての仕入VATが納付額の計算から控除できるわけではありません。以下のケースでは、仕入VATを控除することはできません。

  • 税務証明書(Tax Invoice)がない、または不備がある場合: 正式な税務証明書がない場合や、記載事項に誤りがある場合は、仕入VATを控除できません。
  • 事業に直接関係のない支出: 社用車を購入した際のVATなど、事業に直接関係のない支出に係るVATは控除できません。
  • 交際費: 接待費や贈答品にかかるVATは、原則として控除できません。
  • 無資格者が発行した税務証明書: 正式な資格を持たない者が発行した税務証明書に基づくVATは控除できません。
  • 税務証明書に事業者の情報が不足している場合: 税務証明書に事業者の名称、住所、納税者番号が正しく記載されていない場合、控除できません。

Tax Invoiceの重要性

タイにおいて、事業者が商品やサービスを売買する際には、必ず税務証明書(Tax Invoice)を発行・受領する必要があります。Tax Invoiceは、売上金額と付加価値税(VAT)の金額が記載された正式な書類であり、納税額の計算や税務調査の際に重要な証拠となります。

Tax Invoiceの記載事項

税務法では、Tax Invoiceに以下の事項を記載することが義務付けられています。

  • 税務証明書である旨の明記: Tax Invoiceであることを明確に表示する必要があります。
  • 発行者と購入者の情報: 発行者と購入者の名称、住所、納税者番号などを正確に記載します。
  • 取引の内容: 販売された商品やサービスの種類、数量、価格、そして計算されたVAT額を明記します。
  • 発行日: 税務証明書を発行した日付を記載します。
  • その他: 税務局長が定めるその他の事項を記載する場合があります。

Tax Invoiceの保管

発行したTax Invoiceと受け取ったTax Invoiceは、共に少なくとも5年間保管する必要があります。税務調査の際に、これらの書類が要求されることがあるため、大切に保管しておくことが重要です。

税務証明書の修正

税務証明書に誤りがあった場合、または取引内容に変更が生じた場合は、税務証明書を修正する必要があります。修正には、Debit Note(D/N)とCredit Note(C/N)という書類を使用します。

  • Debit Note(D/N): 売上金額が増額した場合に発行します。
  • Credit Note(C/N): 売上金額が減額した場合に発行します。

税務当局は、売上金額が増える場合(D/N)の修正は比較的柔軟に受け付けますが、売上金額が減る場合(C/N)の修正は厳格に審査します。

課税点とは?

VATの納税義務が発生する具体的な時点を「課税点」と呼びます。この課税点は、取引の種類によって異なります。

物品の販売における課税点

商品を売買する取引の場合、以下のいずれかのタイミングが早い方が、VATの課税点となります。

  • 商品の引き渡し: 商品を買い手に渡したとき
  • 所有権の移転: 法律上、商品の所有権が売り手から買い手に移ったとき
  • 代金の受け取り: 商品の対価としてお金を受け取ったとき
  • 税務証明書(Tax Invoice)の発行: 税務証明書を発行したとき

サービスの提供における課税点

サービスを提供する取引の場合、以下のいずれかのタイミングが早い方が、VATの課税点となります。

  • 代金の受け取り: サービスの対価としてお金を受け取ったとき
  • サービスの利用: 顧客がサービスを利用し始めたとき
  • 税務証明書(Tax Invoice)の発行: 税務証明書を発行したとき

物品の輸入における課税点

海外から商品を輸入する場合、以下のタイミングが課税点となります。

  • 輸入関税の支払い: 商品を輸入する際に支払う関税を支払ったとき
  • 輸入関税が免除されている場合: 通関手続きが完了したとき

サービスの輸入における課税点

海外からサービスを購入する場合、以下のタイミングが課税点となります。

  • 代金の支払い: サービスの対価を支払ったとき

サービスの輸入の場合、税務証明書(Tax Invoice)の代わりに、歳入局が発行する領収書が使用されます。また、タイ国内にいる支払者がVATの納税義務を負い、PP36(Phor Phor 36)という申告書で申告・納税する必要があります。

源泉徴収税とは?

源泉徴収税とは、所得が発生した時点で、その所得を支払う側が、あらかじめ税金を差し引いて国に納める制度。

なぜ源泉徴収が必要なの?

源泉徴収制度は、以下の目的で導入されています。

  • 税収の安定化: 所得が発生した時点で税金を徴収することで、国は安定した税収を確保することができます。
  • 納税意識の向上: 所得を得る人々に、納税の義務があることを意識させ、納税意識を高める効果があります。
  • 税務行政の効率化: 納税者が自ら申告する手間を省き、税務行政の効率化を図ることができます。

月次で会計処理が必要な主な源泉徴収税

タイでは、源泉徴収税には様々な種類がありますが、特に企業が月次で会計処理を行う必要がある主なものとして、PND1、3、53、54が挙げられます。これらの源泉徴収税は、それぞれ異なる種類の所得に対して適用されます。

  • PND1: 給与所得に対する源泉徴収
  • PND3: 利子所得に対する源泉徴収
  • PND53: ロイヤリティに対する源泉徴収
  • PND54: サービス提供に対する源泉徴収

タイにおける源泉徴収税の申告・納税期限と罰則

タイにおいて、源泉徴収税を納める義務がある企業は、その税金を納めるだけでなく、納めた税額を国に申告する義務があります。

この申告と納税の期限は、原則として、支払いが行われた月の翌月7日までとなっています。ただし、電子申告システム(E-tax)を利用している場合は、翌月15日までと、少し猶予が与えられます。

申告漏れや遅延した場合のペナルティ

もし、源泉徴収税の申告を忘れてしまったり、期限内に納税できなかった場合、ペナルティが課されます。

  • 加算税: 申告漏れや納税遅延をした場合、未納の税額に対して、毎月1.5%の加算税が課されます。つまり、時間が経つにつれて、支払うべき金額が増えていくということです。
  • 未提出罰金: 申告書自体を提出しなかった場合は、1件につき200バーツの罰金が課されます。

PND1とは何か?

PND1は、源泉徴収税を申告するための書類です。企業は、従業員の給料から源泉徴収した税金の金額をPND1に記載し、税務署に提出します。

PND3とPND53とは何か?

PND3とPND53は、タイにおける源泉徴収税の申告書の一種です。企業が、他の企業や個人に対して、サービスの対価や報酬などを支払う際に、その支払額からあらかじめ税金を差し引き、国に納める必要があります。

  • PND3: 個人に対して支払う報酬、手数料などに対して源泉徴収を行った場合に使用する申告書です。
  • PND53: 法人に対して支払うサービス料、使用料などに対して源泉徴収を行った場合に使用する申告書です。

PND54とは何か?

PND54は、タイ語で「Por Ngor Dor 54」と書き、日本語に直訳すると「所得申告書第54号」という意味になります。この書類は、タイに拠点を置かない外国の法人に対して、タイ国内から支払う対価(例えば、サービス提供に対する報酬など)に対して源泉徴収を行った際に、その内容を申告するために使用されます。

また、PND54には他の源泉徴収税の申告書(PND3やPND53)と比べて以下の特徴があります。

  • 取引ごとの詳細な記載: PND54では、支払先の外国法人の社名、住所、支払内容など、取引の詳細を個別に記載する必要があります。
  • 税率区分: 支払の種類によって税率が異なります。上記の表に示されているように、仲介手数料、ロイヤルティなど、様々な支払に対して異なる税率が適用されます。
  • 外国税額控除: タイで源泉徴収された税金は、外国税額控除として日本の所得税から差し引くことができます。

タイの法人税の概要

タイで法人として事業を行う場合、その法人格にかかわらず、国内外の事業活動から得られるすべての所得に対して、法人税が課されます。

また、タイの法人税の申告と納税は、年に2回行う必要があります。

  • 確定申告: 事業年度終了後、150日以内に確定申告を行い、年間の所得に基づいて算出された税額を納税します。
  • 中間申告: 事業年度の半期経過後、60日以内に中間申告を行い、その時点で推定される年間の税額の半分を納税します。

タイにおける法人の中間申告について

タイで法人として事業を行う場合、事業年度の半期ごとに、その時点で見込まれる年間の所得に基づいて税金を申告することを中間申告といいます。この申告は、PND51という専用の申告書を用いて行われます。

中間申告の注意点

中間申告では、年間の見積所得に基づいて税額を算出するため、実際の年間所得と大きな差が生じる可能性があります。

  • 過少申告のリスク: 年間見積所得が実際の所得を25%以上下回っていた場合、不足分の税額に加えて、20%の罰金と、毎月1.5%の延滞税が課される可能性があります。
  • ペナルティの免除: ただし、中間納税額が前年度の年税額の1/2以上であれば、「合理的な理由」として、このペナルティを免除される可能性があります。

中間申告の免除

以下のいずれかに該当する場合、中間申告を免除されます。

  • 事業年度が12ヶ月未満の場合: 会社設立直後や清算する場合など、事業年度が12ヶ月に満たない場合は、中間申告は不要です。
  • 事業年度の変更: 会社が決算日をを変更し、変更後の事業年度が6ヶ月に満たない場合も、中間申告は不要です

タイにおける法人の確定申告について

タイにおいて、法人は事業年度が終了した後、150日以内に確定申告を行うことが義務付けられています。また、確定申告はPND50という専用の申告書を用いて行われます。

課税所得の計算

確定申告で最も重要なのは、課税所得の計算です。課税所得は、会計上の利益を基に、税法上の調整を行った金額です。

  • 会計上の利益: これは、企業が作成する財務諸表に記載されている利益です。
  • 税法上の調整: 会計上の利益から、税法上の規定に基づいて、益金算入すべき金額を加えたり、損金不算入すべき金額を差し引いたりして調整を行います。

益金算入項目とは、会計上は収益に含めていないが、税法上は収益とみなす項目のことです。例えば、無償で受け取った資産の評価額などが挙げられます。

損金不算入項目とは、会計上は費用として計上しているが、税法上は費用と認められない項目のことです。例えば、役員の私的使用のための資産の購入費用などが挙げられます。

損金算入すべき項目とは、会計上は費用として計上していないが、税法上は費用とみなす項目のことです。例えば、研究開発費に対する特別償却などが挙げられます。

課税所得の計算式

課税所得 = 会計上の収益 – 会計上の費用 ± 申告調整項目 – 繰越欠損金

法人税額の計算

課税所得に、法定の税率を乗じて法人税額を計算します。ただし、中間納付税額や源泉徴収税額、税額控除などを差し引くことで、最終的な納付税額が決定します。

法人税率

法人税率は、原則として20%です。ただし、中小企業(資本金が500万バーツ以下で、年間の収益が3,000万バーツ以下の企業)に対しては、累進税率が適用される場合があります。

繰越欠損金

課税所得が赤字の場合、その赤字額は繰越欠損金として将来の課税所得から控除することができます。繰越欠損金の控除期間は、原則として5年です。

まとめ

確定申告は、企業にとって重要な税務手続きであり、正確な申告を行うために、専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。

タイ進出成功の鍵は信頼できるパートナー

タイは、東南アジアにおける経済成長が著しい国の一つです。しかし、日本とは異なるビジネス慣習や法規制が存在するため、十分な情報収集なしに安易に進出することは危険です。そこで鍵となるのが、信頼できるパートナー選びです。

なぜパートナーが必要なのか?

スポーツや勉強と同じように、ビジネスにおいても経験豊富な人に教わることで、より早く、そして確実に目標を達成することができます。特に、異国の地でのビジネス展開は、多くの未知なる要素を含んでいます。

タイ進出におけるパートナーの役割

  • 現地情報の提供: タイの法律、文化、ビジネス慣習など、日本との違いを熟知しています。
  • 手続き代行: 会社設立、ビザ申請、銀行口座開設など、煩雑な手続きを代行してくれます。
  • ネットワーク構築: 現地の企業や政府機関とのネットワークを活かし、ビジネスチャンスを広げます。
  • リスク管理: 潜在的なリスクを事前に予測し、対策を講じます。

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