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東南アジアにおいて目覚ましい成長を遂げているタイ。ビジネス活動をするにあたり、経済の動向や政治は切っても切り離せません。特に日本企業が進出する際には、日本との差に驚くことも少なくないでしょう。今回は、タイの経済動向、政府の方針、そして日本企業の進出状況まで、多角的に深掘りしていきます。
タイ経済の現状
タイ経済は近年、安定した成長を続けています。その背景には、自動車産業や電子部品製造などの主力産業の貢献が大きいでしょう。しかし、世界経済の変動やサプライチェーンの再編など、外部環境の変化が経済に与える影響も無視できません。
上がり続ける貨幣価値
タイバーツと日本円の為替相場を見ていきましょう。
2014年1月時点では、
「1タイバーツ = 3.1776円」でした。
しかし、2024年1月には、
「1タイバーツ = 4.0350円」と、
10年間で約27%タイバーツが円に対して価値をあげています。
では、この成長の要因はどこにあるのでしょうか?
成長要因
タイの経済成長を支える要因は主に下記の3点です。
- 製造業の活性化: 自動車、電気製品など、製造業が経済を牽引してきました。特に、中国からの製造業の移転は、タイ経済に大きな影響を与えています。
- サービス業の拡大: 観光業、金融業など、サービス業も成長を続けています。
- 政府によるインフラ投資: 交通インフラの整備やデジタル化など、政府による大規模な投資が経済成長を後押ししています。
タイ経済の課題
順調に経済成長を遂げている一方で、課題も抱えています。
- 中国経済への依存: 中国はタイにとって最大の貿易相手国であり、中国経済の減速は、タイ経済にも大きな影響を与えています。
- 観光業の回復遅延: コロナ禍の影響で、観光業の回復が遅れており、経済成長の足かせとなっています。
- インフレ: 世界的な物価上昇の影響を受け、タイでもインフレが問題となっています。
- 政治不安: 政情不安は、投資家の不安感を高め、経済成長を阻害する可能性があります。
急速な経済の発展に伴い、経済格差や特定の国家への依存による不均衡など、国内外の様々な情勢が複雑に絡み合い、課題を引き起こしています。
タイの政治的特徴
では続いて、政治的な観点からも見ていきましょう。
タイの政治は、その長い歴史の中で様々な勢力が権力をめぐる争いを起こし、数多くの変遷を経験しています。
そして現在もなお、その複雑な状況が続いています。
特徴的な政治体制
- 立憲君主制: タイは立憲君主制を採用しており、国王は国家元首として象徴的な地位を占めています。しかし、国王は政治に一定の影響力を持つとされており、政治情勢に大きな影響を与えることがあります。
- 軍部の影響力: タイの歴史において、軍部は政治に深く関与してきました。クーデターが何度も発生し、軍人が政権を握ることも少なくありません。
- 政党政治の未成熟: 政党政治は定着しているものの、政党間の対立が激しく、政権交代が頻繁に行われるなど、政治の安定性に欠ける側面があります。
- 民衆の政治参加: 民衆の政治意識は高まっており、デモや抗議活動を通じて政治に影響を与えようとする動きが活発です。
政治課題
- 政党政治の安定化: 政党間の対立が深化し、政権交代が頻繁に行われるため、政策の継続性が確保されず、経済成長の妨げとなっています。
- 格差の拡大: 都市部と地方部、富裕層と貧困層の間の格差が拡大しており、社会不安の要因となっています。
- 腐敗問題: 政治家や官僚による腐敗が深刻な問題となっており、国民の信頼を損なっています。
- 軍部の役割: 軍部は依然として政治に強い影響力を持っており、民主化の妨げとなる可能性があります。
- 王室問題: 王室は国民にとって特別な存在ですが、その地位や役割について議論が深まっています。
近年の政治動向
近年では、2014年のクーデター以降、軍主導の政権が続いています。しかし、2023年の総選挙では、若者を中心に民主化を求める声が強まり、新たな政党が躍進しました。
成長を加速させるタイの経済政策
複雑な要素が絡み合うタイではありますが、近年では経済成長を加速させるため、積極的な経済政策が行われています。
タイ政府が2015年に発表した長期的な経済開発計画である、「タイランド4.0」は、従来の農業や軽工業中心の経済から脱却し、先進国入りを目指した新たな経済モデルです。このモデルは、デジタル技術を駆使し、高付加価値な産業を育成することで、持続可能な経済成長を実現するというものです。
具体的には、自動車やエレクトロニクスといった既存産業の競争力強化に加え、ロボットや人工知能、バイオテクノロジーといった未来産業の育成に力を入れています。特に、これらの未来産業の発展には、外国企業の技術や資金が不可欠であるため、タイ政府は外国企業の誘致に積極的に取り組んでいます。
タイランド4.0の10のターゲット産業
タイ政府は、タイランド4.0において重点的に育成する10の産業を「ターゲット産業」として定めています。
- 既存産業の強化: 自動車、スマート・エレクトロニクス、医療・健康ツーリズム、農業・バイオテクノロジー、未来食品
- 未来産業の育成: ロボット産業、航空・ロジスティック、バイオ燃料・バイオ化学、デジタル産業、医療ハブ
外国企業誘致のための政策
外国企業の誘致を促進するため、タイ政府は「タイランド・プラス」という政策を導入しました。この政策では、大規模な投資案件に対して法人税の軽減や機械の輸入税の免除などの優遇措置が提供されます。これにより、タイはASEAN地域における投資先としてますます魅力的な国となっています。
タイランド4.0が目指すもの
タイランド4.0は、単に経済成長を目指すだけでなく、より良い社会の実現も目指しています。デジタル技術を活用することで、教育や医療の分野でも革新的なサービスを提供し、国民の生活の質向上に貢献したいと考えています。
新型コロナウイルスの影響
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、タイ経済にも深刻な打撃を与えました。特に、2020年は観光業を中心に経済活動が大幅に縮小し、2009年以来のマイナス成長を記録しました。
しかし、2021年に入ると、ワクチン接種が進み、新規感染者数が減少傾向を見せるなど、経済回復の兆しが見え始めています。特に9月以降は、政府による規制緩和が進み、観光業においてもワクチン接種済みの外国人観光客に対する入国制限が緩和されるなど、経済活動の活発化が期待されています。
具体的な影響と回復の動き
- 経済成長率: 2020年はマイナス成長を記録しましたが、2021年9月以降はプラス成長に転じています。
- 観光業: 外国人観光客の激減により大きな打撃を受けましたが、ワクチン接種が進み、隔離義務の緩和などにより、徐々に回復の兆しが見られています。
- ワクチン接種: 2021年11月時点では、国民の半数以上がワクチンを接種しており、集団免疫獲得に向けて進んでいます。
タイにおける日系企業の活躍
タイは、長年にわたり日系企業にとって魅力的な投資先であり続けています。バンコク日本人商工会議所(JCC)のデータによると、2021年4月時点において、1685社もの日本企業がタイに進出しており、その数は近年まで右肩上がりで増加していました。
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、タイ経済に大きな打撃を与え、日系企業も例外ではありません。JCCの調査結果では、2021年度前期においても、多くの企業が新型コロナウイルスの影響を受けていることが明らかになりました。しかしながら、世界経済の回復に伴い、タイ経済にも改善が見られ始めたことで、製造業を中心に業況が上向いている企業も増えてきています。特に、設備投資や輸出の増加を見込む企業が40%、46%と、今後の成長に対する期待が感じられます。
タイにおける日系企業の役割
日系企業は、タイの経済発展に多大な貢献をしてきました。自動車産業、電子部品製造業など、様々な分野において、日本企業は現地生産を行い、雇用創出や技術移転を進めてきました。また、日系企業は、タイのインフラ整備や教育にも貢献しており、タイ社会の発展を支えています。
新型コロナウイルスが与えた影響と今後の課題
新型コロナウイルス感染症は、日系企業の事業活動に大きな影響を与えました。サプライチェーンの混乱、消費者の行動の変化、人材不足など、様々な課題が浮上しました。しかし、多くの企業は、この危機を乗り越えるために、デジタル化の推進や事業ポートフォリオの再編など、様々な取り組みを進めています。
まとめ
タイは、日系企業にとって魅力的な投資先であり続けています。新型コロナウイルス感染症の影響はすでに過去のものになりつつあり、タイ経済は回復の兆しを見せています。今こそ日系企業の活躍が期待されます。
タイ進出成功の鍵は信頼できるパートナー
タイでの会社設立は、大きなチャンスと同時に、多くの課題も伴います。成功するためには、事前に十分な準備と現地でのサポート体制が不可欠です。本記事で紹介した情報を参考に、慎重に計画を進めてください。
タイは、東南アジアにおける経済成長が著しい国の一つです。しかし、日本とは異なるビジネス慣習や法規制が存在するため、十分な情報収集なしに安易に進出することは危険です。そこで鍵となるのが、信頼できるパートナー選びです。
なぜパートナーが必要なのか?
スポーツや勉強と同じように、ビジネスにおいても経験豊富な人に教わることで、より早く、そして確実に目標を達成することができます。特に、異国の地でのビジネス展開は、多くの未知なる要素を含んでいます。
タイ進出におけるパートナーの役割
- 現地情報の提供: タイの法律、文化、ビジネス慣習など、日本との違いを熟知しています。
- 手続き代行: 会社設立、ビザ申請、銀行口座開設など、煩雑な手続きを代行してくれます。
- ネットワーク構築: 現地の企業や政府機関とのネットワークを活かし、ビジネスチャンスを広げます。
- リスク管理: 潜在的なリスクを事前に予測し、対策を講じます。
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